ネパリへの叱り方

<叱り方:怒らない>

ネパリを相手にしていると、怒りたくなることも多々あるでしょう。ですが南アジアや東南アジアなど、他の多くのアジア圏同様、ネパリに対しても「怒る」という定義は存在しないと考えてください。ネパールでも激怒する人は確かにいます。でもそれは、周囲の関係を壊して孤立することを意味します。ゆえにネパリに対して怒るのはタブーであると肝に銘じてください。それでここでは、「怒り方」ではなく「叱り方」を考えることにしましょう。

大声で檄を飛ばし、仕事場で、あるいは公衆の面前で、部下を怒り飛ばすのは、日本人には当たり前のことかもしれません。ですが、ネパリには全く通用しません。万が一ぶち切れて激情を顕わにし、暴言まで吐いてしまったとすれば、もう修復は不可能だと思ってください。彼らは、あなたを恨んだりは決してしないでしょう。それでも自分は疎まれたと考え、さっさと退職の準備に入るでしょう。翌日から無断欠勤すらしかねません。第一そうなってしまっては、会社に多大の損害をもたらします。絶対に切れてはならないのです。

ではネパリの部下に対し、どうしても叱らなければならない場合はどうすべきでしょう。忘れないでください。絶対に感情的になってはなりません。多くの日本人が、ここで見事に惨敗してきました。願わくばニコニコしながら怒れるよう、自分を鍛錬しましょう。意識すれば慣れてくるものです。

<叱り方:二人称を避ける>

間違っても、個人攻撃にならないよう注意しましょう。「君は何度言ったら分かるんだ」「あなたのその考え方が間違いなんだ」「お前さあ…」などです。二人称で語ると、どうしても矛先が個人に向いて失敗しやすくなります。むしろ、「僕たちはね…」「私たちの場合は…」と、一人称複数で語るなら、共同チームとしての共有感を持たせられますし、「そのやり方はねえ…」「あの言葉は…」などと、三人称にして問題に注意を向けることも効果的です。

<叱り方:共同責任>

一人の問題児がいたとします。一対一で向き合いながら、親切な仕方で問題に注意を喚起させることは十分可能です。ただあまり効果は上がりません。問題行動を取るということは、あなたともあまり良い関係ではないでしょう。その場合、ネパリチームを前に、あるいは部署全体を前にして問題点を指摘するのが効果的です。ただ、注意すべきこともあります。問題社員を名指ししたり、その人と分かる仕方で述べてはなりません。公衆の面前で人に恥をかかせるなど、決してあってはならないのです。こうして数回指摘するだけでも、互いを強く意識し合うネパリチームには効果絶大であり、問題は自然消滅していくでしょう。それでも駄目なら、幾度か個人的に時間を取って励まし、それでも駄目なら、最後に一対一で決着を着ける必要があるでしょう。

<叱り方:毅然とした態度>

部下に穏やかに接することと何でも許容することとの間には、天地ほどの差があります。毅然とした態度は不可欠です。知らない街を走る時、GPSがあるのとないのとでは、どちらが確かなものとなるでしょう。目的のない旅ならなしでもいいでしょうが、商談や契約が控えている旅なら被害は甚大です。同様に、絶対に超えてはならない線を設け、社員がそれを超えた時にはびしっと伝え、適切な指針を与えなければなりません。毅然とした態度はGPSの役割を果たします。指針を明確に伝えないということは上司の怠慢であり、その部下を真に気遣っていないことになります。部下の成長の機会を摘んでいるからです。

幸いないことにネパリたちは、こうした上司の毅然とした態度に敏感に反応します。敬意をさらに深め、あなたをさらに慕うようになるでしょう。「それはダメ!」「それは間違いだ!」「違う!」と一言だけ、それもはっきりと明瞭に伝えるだけで十分に意思は伝わります。ただし、ここでも幾つかの注意点があります。

  1. だらだらくどくど言わない。送りバントは一発で決めなければなりません。一言も、一発で決める必要があります。

  2. 普段の滑らかな意思の疎通があって初めて有効。普段はだんまりなのに、たまに口を開けば「ダメ!」では、効果はゼロです。

  3. たまに使って効果がある。毎日何度も「ダメ、ダメ」と言っているようでは、これまた効果が薄れます。

このように超えてはならない線に対して、はばかることなく獅子のように立ち上がって不動の姿勢を取れば、ネパリ社員はあなたを羨望の眼差しで見るようになり、社員としても自尊心を高め、職務に一層励むことでしょう。

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